2011年8月5日金曜日

面積の求め方の落とし穴

平面図形の図形としての最小単位は三角形です。(ニ角形というのはないからです)でも、面積の導入は、長方形や正方形の面積です。それはなぜか。答えは簡単です。面積の学習は図形の学習とは違うからです。算数で言うと「量と測定」という領域になります。(「図形」領域ではないのです)

「面積を求める」というのは単位正方形(1cm²、1m²、1km²…etc)がいくつあるかを数える作業です。例えば1cm²は1辺が1cmの正方形と考えてください。これを、広さをはかる尺度にしようと決めたのです。長さの単位を使って、広さの単位を作り出したわけです。でも、そもそも長さと広さには、優位な相関性はありません。周りの長さが同じでも、面積は必ずしも同じではないからです。ところが、このことが子どもたちを混乱させる原因となります。

私たちが何かを「測る」とき、それは必ずしも見やすい形で表されるとは限りません。そこで人々は、わかりやすい尺度に変換して測りやすくする方法を考え出しました。温度計も時計の文字盤も、それぞれ温度と時間を長さに変換して測る道具です。そう考えると、長さに変換して測るパターンが多いことに気付かされます。バネばかりや上皿ばかり、雨量計なんかもみんな長さに変換しています。つまり、長さというのはヒトにとって、とてもわかりやすいものだと言うことができるのです。

すると、面積を求める学習で、長方形の面積は「縦(の長さ)×横(の長さ)」で求められるということを早くから前面に出しすぎてしまうと、子どもたちは「長さ」の方にばかり目が行ってしまって、肝心の「単位正方形を数える」ということを忘れてしまうのです。だから、いろいろな形の広さを調べさせようとすると、一生懸命周りの長さを測って、その長さで比べようとしてしまう子どもが出ます。複合図形に対しても、長方形や正方形が見えてこないと求積をあきらめてしまったり、闇雲に長さを測って適当にかけ算するという子どもたちが現れてしまうのです。

確かに、「縦×横」を定着させると、早くスムーズに面積を求めることができます。また、小数や分数になった場合でも簡単に求積できますのでとても便利です。そのためか、先生たちの中には、「いつまでも単位正方形を数えさせていないで、早く長さに着目させなくてはならない」と思い込んでいる人もいます。でも、肝心なことを忘れさせてしまうのなら、本末転倒と言わざるを得ません。求積公式は、あくまで「単位正方形を数える方法」に過ぎなくて、常に単位正方形を数えている感覚を、面(広さ)を見ることを忘れさせないようにすることが大切なのだと思います。

さらに詳しい面積の話は、図形の等積変形が可能だったり、倍積変形して半分にすればもとに戻ったり、限りなく薄くスライスしてずらすことができたり、…など、図形の操作に関することと同時に身につけていけば良いのだろうと思います。いつかは単位正方形も固定的なものではないことに気づかせなければなりませんが、あわてる必要はないと思います。

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